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反日のタブー破りて救助隊 四川の山野に日の丸の立つ (05月16日)(金)

 明るい曇りである。14−18度C 8時35分 トーヨーで打ち合わせ 9時 区へ 打ち合わせ 執務 来客 13時15分 福祉部高原障害者福祉課長の監査 15時30分 退庁
 18時 井伊経済振興協会に出席した(千代田区) 夜は平岩正樹「何のために生きるか」を読む。
 

●中国四川大地震で、新華社は15日、直接の被災者が1000万人を超え、九州の1.8倍相当の6万5000平方キロの地域が深刻な被害を受けたと伝えた。
 死者約1万5000人、少なくとも2万5000人が生き埋めのままだ。
 地方役人へのワイロ横行によるずさん建築が学校を倒壊させ、多くの子供が犠牲になった事態に、ネット上では「責任者を極刑にせよ」との批判が噴出している。
 聖火リレー妨害でも批判が政府に向かないよう巧みに「愛国」に誘導してきた胡錦濤政権だが、行政への反旗という最も恐れたパンドラの箱が開いてしまった。 
 
 「1人1本しかミネラルウオーターをもらえなかった」。がれきが広がる四川省都江堰市の被災男性は肩を落とした。
 中学校倒壊現場。がれきの下から子供の遺体が次々に搬出される。
 線香が手向けられ、弔いの爆竹が鳴る。泣き疲れ、呆然とした母親らがその貴重なミネラルウオーターでわが子の体を洗う。同じ光景が何度も何度も繰り返された。
 まるで地獄。水のペットボトルや援助物資をめぐって殴り合う住民の姿も各所でみられた。「なんで政府は助けてくれない」。被災者は口々に支援の遅れをなじった。
 
 省都の成都では「化学工場から毒が流れ、水道水が汚染された」というウワサが駆けめぐった。
 人々は水を買いに店に殺到し、パニック状態になった。ネットがもとのデマだった。
 中国は、実は震災のかなり以前から深刻な水不足に悩まされていた。
 使える水は世界平均の3分の1以下。北京五輪を前に北京や食糧基地の北部への水供給が優先され、四川などの改善は後回しにされた。
 唯一、政府に幸いしたのは、チベット騒乱を受け、四川で実施される聖火リレーに備え、武装警察の大部隊を被災地周辺に配備していたことだ。この部隊が救助活動に威力を発揮した。
 
 温家宝首相は震災現場の激励に飛び回る。ときに幹部をしかりとばす姿が報道され、現場に向かう途上、不安げな少女2人をしっかり抱き、「皆さんの苦しみはわれわれの苦しみです」と訴えるシーンが繰り返しテレビに流れた。緻密に計算されたかのような構図。
 人民日報は、党がメディアに軍や警察の活躍と感動的な場面を強く宣伝するよう指示した事実を報じた。
 既存メディアだけでなく、大手サイトまで「軍、警察の活躍」「感動場面」のスレッドで埋め尽くされた。
 だが、一般ユーザーからは、これまで暴動のとできさえ見られなかった痛烈な行政批判が出現した。
 
 ≪中国では学校と病院を一番もろく作っている≫
≪役人がワイロを取ったことによるオカラ工事が倒壊を招いた≫
≪校舎を建てた行政責任者を極刑にせよ≫
≪児童、生徒の親たちは立ち上がれ≫
 オカラ工事とは豆腐のオカラのようにスカスカにした手抜き工事のこと。
 「公共施設では工事を請け負うため、地方役人へワイロを贈る。
 莫大なワイロを捻出するため、信じられない手抜きが横行する。
 その現実がはっきり突き付けられた」とジャーナリストの富坂聰氏は説明している。
 「政府がいくら愛国に音頭を取っても身近な行政が腐っていることを知っており、批判は止まらなくなり、行政システムに向かい始めている」と指摘する。
 
 役人の汚職は中国近代化の最大の障害で、胡政権は上海市のトップを汚職で逮捕するなど撲滅に乗り出し、積極的に情報を開示してきた。
 人々は汚職の深刻さを知ることとなるが、皮肉にも震災を契機に批判の刃が政府に向いたのだ。
 ≪泣いている人の横で五輪を祝えるのか≫。チベット騒乱でも揺るがなかった五輪開催の中止を求める声も噴出。≪金持ちの高級住宅地は被害を受けなかった。
 貧乏人は死んでもいいということだ≫と格差を訴える声も目立つ。
 ≪〇〇社長は、富豪なのに募金していない≫と名指しで資産家を個人攻撃する書き込みまであった。
 
 富坂氏は「政府は物価の統制に失敗しており、庶民は未来への不安があった。このまま不安が広がれば強盗など短絡的犯罪が横行、秩序が保てなくなる恐れがある」と話す。それを予感させるように「震災募金」を装った振り込め詐欺が横行、2人が処分された。
 「持てる者か、持たざる者か、政府がどちらに味方するかに掛かっている。
 ただ、ポーズで持たざる者の側に立てても市場経済がこれだけ進んだなか、実際に政策で救済するのは難しい。胡政権は非常に困難な分岐点に立たされている」と富坂氏は危惧する。
 
 
●信じられない事態だ。犠牲者が5万人にのぼる恐れもある中国四川大地震で、外国として初めて日本の国際緊急援助隊が被災地入りしたが、中国のネットが「ありがとう、日本!」の書き込みであふれたのだ。
 チベット問題での国際的孤立から日本重視に移りたい政府。 アニメなど日本文化の大量流入で「親日」の土壌があった民衆。
 だが、お互いにそれを表明することは「売国奴」を意味し、最大のタブーだった。
 それが未曾有の震災によって「反日」の壁が崩れ、歴史が動いた。
 
 ≪私は日本人が嫌いだった。かつて無数の中国人を殺した。でもそれは前の世代のこと。
 援助隊は人数こそ少ないが私はとても感謝したい。中日の永遠の友好関係に発展することを望む。日本の友よ、ありがとう≫。中国のニュースサイトへの書き込みだ。
 
 東京消防庁ハイパーレスキュー隊や海上保安庁特殊救難隊で構成された援助隊は16日未明に空路、四川省成都に入り、午前のうちに北に400キロの被害が激しい青川県に入った。  「雨が降って水分があるので、生存者がいると信じている。地獄の状況だと覚悟している。1人でも多く救いたい」と隊員は語った。
 
 72時間という生死を分ける目安の時間を超えての投入となるが、ハイパー隊は3年半前の新潟中越地震でがけ崩れ現場から皆川優太君=当時(2)=を地震発生から93時間ぶりに助け出した実績があるだけに中国側の期待も高い。
 中国メディアは援助隊到着前から「阪神大震災などで豊富な経験があり、世界最先端の機器を携えやってくる」と大々的に報道。
 ≪ただ、ただ、感謝している ≫
 ≪なんでもっと早く呼ばなかった。彼らの経験はすごい≫
 ≪ずっと日本に偏見があったが、日本人はいい人だ≫とネットの書き込みが相次いだ。
 
 騒ぎには予兆があった。地震直後から中国人の間で「なんで経験豊富な日本の部隊に派遣を要請しないんだ」という声が出た。
 日本が5億円の支援を表明すると「もう歴史なんて言い出すべきじゃない」「未来志向だ」との意見まで出た。
 政府は胡錦濤主席の訪日前後からチベット問題での日本人の好意的な声を大きく報道させるなど、友好ムードを醸成しようとしてきたが、ジャーナリストの富坂聰氏は
 「政府の支援要請前に民衆側からここまで思い切った意見が出るとは驚いた。
 こんなこと言っても大丈夫かと思った。政府にとっては嬉しい誤算では」と話す。靖国問題やガス田開発問題があり、対処を間違ったら国民から売国奴扱いされかねなかったからだ。
 
 国民側も同じ。20、30代の大半は海賊版の日本アニメを見たり、ゲームをして育ち、日本に憧れを持つ者が少なくなかったが、親日的なことをにおわすと袋叩きにされた。
 特に震災地域は日中戦争で重慶爆撃を経験、最も反日感情が強い地域とされ、日の丸部隊の活躍は想像外だった。
 軍が救助活動を主導しており、援助隊受け入れには軍部が難色を示していたともいう。
 
 それが一気に受け入れに動いたのは道路の復旧さえ進められないほどの救助活動での軍の失態で、現地で指揮する温家宝首相は
 「民に養われていることを分かっているのか!」と軍幹部を面罵したという。
 今回の動きは国民意識を固めるため、戦後60年以上、共産党政権が堅持してきた「反日」放棄の兆しをうかがわせており、富坂氏は「これをどう発展させるかは、日本側にかかっている」と指摘している。

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